特集コラム

Column 3 荻窪名所探訪

2011/03/29

角川庭園・幻戯山房「すぎなみ詩歌館」

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JR荻窪駅の南を、読書の森公園・大田黒公園と歩くと、角川庭園・幻戯山房「すぎなみ詩歌館」があります。角川書店(現・角川グループホールディングス)創設者で、俳人・国文学者の角川源義(げんよし、1917-1975)の邸宅を、外観を可能な限り創建当時の姿に復元したもので、ウメ、サツキ、サルスベリなど季節の花を楽しむことができる庭園は公園として開放されています。

角川源義は富山県に生まれました。幼いころは母親っこだったようですが、早くから「講談倶楽部」「キング」など年長者向けの雑誌を読みふけりました。学校では漢文で抜群の素質を見せました。東京市立一中(現・東京都立九段高校)に通い、1945年に角川書店を設立。1949年に角川文庫を創刊。1952年には『昭和文学全集』を刊行し成功を収めます。

現在、角川文庫の巻末には角川源義の「角川文庫発刊に際して」という文が掲載されています。その冒頭は、「第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗北であった。私たちの文化が戦争に対して如何に無力であり、単なるあだ花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験し痛感した」となっています。

角川源義は、1955年に天沼から、現在角川庭園・幻戯山房「すぎなみ詩歌館」がある荻窪の地に転居しました。当時、角川源義邸の周辺は一面の田んぼだったそうです。

角川源義は、折口信夫に傾倒し、井伏鱒二らと交流がありました。1956年に、少年時代から書きためていた480句を収録した句集『ロダンの首』を刊行します。『ロダンの首』は、世に出るまでにちょっとしたエピソードがあります。出版直前に、角川源義が原稿をタクシーの中に置き忘れてしまったそうです。原稿は運転手から井伏鱒二に渡り、無事に戻ってきたとのことでした。原稿が紛失していれば『ロダンの首』の刊行はありませんでした。

旧角川源義邸は、2005年に、遺族から書籍や美術品らとともに区へ寄贈されました。角川庭園・幻戯山房「すぎなみ詩歌館」として、人々に、くつろぎと学研の場所を提供しています。

角川庭園・幻戯山房「すぎなみ詩歌館」
住所:東京都杉並区荻窪3-14-22
連絡:電話03-6795-6855・Fax03-6795-6855

文・取材 / 竹内みちまろ

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