特集コラム

Column 10 荻窪のイベント

荻窪のイベント
2015/10/27

「第2回太宰サミット - 荻窪の碧雲荘を残せるか - 」開催

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9月14日、杉並公会堂にて「荻窪の歴史文化を育てる会」主催の「第2回太宰サミット - 荻窪の碧雲荘を残せるか - 」が実施されました。

荻窪駅から徒歩約10分の杉並区天沼3丁目にある「碧雲荘」は、太宰治が昭和11年11月から7カ月間住んでいた高級下宿で、『富嶽百景』にも登場し、代表作『人間失格』の原型とも言える短編『HUMAN LOST』が書かれた場所であり、青森県の「斜陽館」「旧藤田家住宅」、山梨県の「天下茶屋」と並ぶ、国内でも数少ない太宰ゆかりの地となっているのです。

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しかし、2016年の春には杉並区によって取り壊され、その跡地に特別養護老人ホームが建てられる計画が着々と進行していることもあり、取り壊し反対の署名活動や、「碧雲荘」を残す文学的な意義に関する講演、建築史家による昭和の下宿屋としての建築的な魅力に関する講演、さらには太宰治ファンとして知られる第153回芥川賞受賞作家の又吉直樹さんの太宰への想いを語ってもらうことで、「碧雲荘」保存のための一石を投じようというシンポジウムでした。

18時開場、18時30分開演。ホールの周りには、「碧雲荘」保存のための署名コーナーや、「碧雲荘」 に関するメディア記事の掲示、太宰治や又吉直樹さんの著書販売、青森県「斜陽館」グッズなどの販売も行われていました。

メディアにも多数取り上げられていることもあってか、開演10分前には大ホール1階が満席。2階席も多くの人で埋まっていました。

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 18時半、開会の挨拶に続いて、原きよさんによる『富嶽百景』の朗読。

「碧雲荘」 から見た富士山についての記述が含まれている部分を中心に、本を手にした朗読というよりも、語りつつ動きもつけた一人芝居のような劇的なスタイルで、内容ごとに背景スクリーンの色が変化したり、BGMとして渡辺秋香さんのピアノ演奏も入るなど、スタートから太宰の世界に引き込まれる展開でした。

東京大学文学部の安藤宏教授による 「碧雲荘の文学的魅力」 では、太宰が上京し三鷹に移り住む前の昭和5年からの8年間を、4つの期に分け、その内、第2・第4期に当たる荻窪時代について語られ、研究者にとっても、太宰の荻窪時代を語るには欠かせない「碧雲荘」を保存してほしいと熱く語られました。

続いて、建築史家の松本裕介氏による「碧雲荘の建築的魅力」では、当時の“下宿”に関する位置づけや約束事、下宿のランクなど、“下宿”の歴史の説明があり、その中で「碧雲荘」のように、窓がサッシになった以外は、昭和の原型を色濃く留めている物件が今や都内に現存していないという事例を、画像投影でわかりやすく紹介。

「碧雲荘」内部の画像も映し出され、モザイクタイルの床やステンドグラスなど、随所に高級下宿としての要素が盛り込まれているといった専門的な内容に踏み込んだ、興味深い内容でした。

第153回芥川賞受賞作家・又吉直樹氏も参戦!

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19時55分から15分の休憩を挟んで、又吉直樹氏の「私の中の太宰治」というテーマでの講演と、日本ペンクラブ常務理事・松本郁子氏との対談があり、お笑い芸人であり小説家としての顔も持つ又吉氏の講演では、幾度となく場内に笑いが起こりました。

彼にとっての太宰の存在や、彼が考える純文学観などについてのエピソードや想いを通じて、シンポジウムに参加した人たちにとっても、自分にとって太宰とは、純文学の魅力とは、といったことを考えさせてくれる内容となっていました。

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最後は、「荻窪の歴史文化を育てる会」副会長・峯岸誠氏による「今後の活動予定」が告知され、「碧雲荘」取り壊しの反対署名を募ると共に、文化財としての保存、若しくは一部保存や移築など、できる限りの活動を推進していきたいという方針が語られ、閉会となりました。

また、入場券の番号で参加者の中から10名に、又吉直樹氏のサイン入り『火花』がもらえるというサプライズもあり、当選番号が書かれた紙の周りには、入場券の番号を確認する人たちでごった返しました。ちなみに私は残念ながらハズレでした。

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【太宰治『富嶽百景』にも登場する「碧雲荘」の今後】へ

文・取材 / 丸山美智子

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